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【レポート】未来セッションvol.5 空き家から生まれる新たな魅力

2023.09.15(金)

豊橋まちなか未来会議では、まちなかのこれからを様々な方と学び、議論し、その実現を考える「未来セッション」を企画しています。vol.5では、中心市街地活性化といえば空き店舗対策と昔から言われてきたなかで、なぜ大切なのか?どんな風に活用していくとよいのか?について考えました。


当日は、商店街の方、空き物件活用に取り組む方、支援策立案する行政の方、他にも不動産事業者や都市コンサルの方などが集まり、話題提供を元に話し合いました。

【話題提供】空き物件活用って実際どうなの?

株式会社ナゴノダナバンク 代表取締役 市原正人さん・藤田まやさん

商店街再生事例として有名な名古屋円頓寺商店街で、お二人がまちづくりに関わることになったきっかけ、どんな思いを持って事業を進められてきたか、についてお伺いしました。

市原さんは名古屋大曾根商店街の近くで生まれ育つなかで大規模な再開発・区画整理により商店街らしさが失われてしまった原体験から、藤田さんは円頓寺商店街の老舗のご出身で生まれ育った円頓寺商店街を残したいという思いから、まちづくりに関わられるようになったそうです。

商店街のアーケードやお祭りといった公の機能は、商店街の旦那衆が担っていたものの、社会情勢が厳しくなり彼らだけでは担いきれなくなったため、商店街の40-50代の方とともに外部の方も入られて那古野下町衆が組成され、空き家対策・街並みルール形成・イベント企画等の取組みを始められたそうです。そのうち空き家対策チームとして試行したのが、ナゴノダナバンク組成とその法人化につながったそうです。いくつか進めていくうえでのポイントも教えて頂きました。

  1. スピード感・・・会議で話し合って決めるのではなく、少人数で実務的に対応しないと進まない。
  2. 提案方法・・・大家さんは経済的には困っておらず、そうじや管理手間などの悩みが多い。ふわっとした相談でなく、事業者・図面・収支計画・家賃想定まで策定した状態での一発勝負で話さないと相手も真剣にお返事してくれないのでは?
  3. 時間軸・・・商店街の老舗も時代に併せて営業スタイルを変えつつ生き残ってきた。そうした中小企業が対応できるくらいの時間軸で、まちの再生も考えることが大切ではないか?円頓寺商店街では1年3~4件かなと思っていたものの、最近ペースが上がっていて危惧している。

「まちづくり、とは何か?」と活動のスタートにあたって自問自答されたそうで、会場へも投げかけがありました。市原さんの答えは、『バランスの取れた日常があること』だそうです。老舗やその店主がいて、古い町並みがあって、伝統やお祭りがあって・・・そんな心地よい日常を残すこと・作ることを大切にしたいと考えられたそうです。

考え方と合わせて、関与された様々な物件の活用について、エピソードを交えながら楽しく説明頂きました。ご自身らで、商店街再生の第一号的な物件や角地の重要物件を購入し、公の視点を持ちつつ商店街の再生を自分事にしておられることが印象的でした。併せて、資金捻出に工夫を重ねたアーケードの架け替えや、今年度も11/11-12に開催される「パリ祭」のお話もして頂きました。


【ディスカッション】どんな街角があったら嬉しい?

「商店街が人気になると、一方で商店街全体にとって入ってもらった方がよいテナントや、その場所だから入りたいというテナントが入れなくなっていく気がする。どうだろうか?」という投げかけ会場からありました。

まず市原さんのご経験を共有頂きました。「当初は、自分が入って欲しいお店を探て、商店街に縁のない人を知りあいづてに連れてきて、一方的な提案を繰り替えしていた。家賃も安く、不動産屋さんは見向きもしないようなエリアだった。その後、徐々に物件を貸してもいいかなと思ってくれる大家さんも増えて、坪単価・家賃は当初の5倍程度になっていった。結果、良くも悪くも多くの不動産屋が動くようになってきた。ただ場所性や営業スタイルをしっかり捉えずにテナントを誘致してきても潰れてしまうエリアなので、そういう不動産屋やテナントは淘汰されていった。課題としては、坪単価が上がってしまったために超高級な飲食店しか開業できなくなってしまっていて、バランスの取れた日常から外れてきているところ。」

これに対して会場から、古い建物や街並みを使おうという文化をエリアで時間をかけて形成したのは大きな功績。なかなかみんながそういう気持ちにはなるのは難しい、と意見がありました。

また空き物件活用の施策を各所で展開されているものの、ワークショップで終わってしまいがちなのは課題では?という声もありました。”ワークショップ”という言葉を使わないこと、実務者に入ってもらうこと、などで提案を実現させられるような企画作りを意識することが大切だろうという話をしました。

当日は豊橋技術科学大学 小野研究室の学生がレコーディングをしてくれました。


まとめとこれから

会場である大豊商店街の取組は、どことなく円頓寺商店街から学んでいる部分が多いように感じます。公の目線でまちがこんな風になったらいいなを想い描きつつ、私の目線でバランスのよい日常が実現するような街角を「自分事」として作る人が多くなることが大切なポイントでしょう。

個々の取組の集積から、古い町並みや建物の活用により、バランスのよい日常が実現されるとともに、地域の歴史を積み重ねていけるような文化が形成されていくとよいなと考えさせられました。


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